新社長が就任早々、全員の前で言い放った。「60歳以上の公員は今月でクビだ。中卒の老人は邪魔なだけだ」と。俺は長年この工場のために技術を磨いてきた。なのに、その技術を「時代遅れ」と笑われ、追い出された。だが、一週間後、新社長から電話がかかってきた。「機械が動かない。どうにかしろ」と。俺は「自分で何とかしろ」と電話を切った。それで終わったと思ったのに、今度は工場の特許を奪おうとする男が現れた。俺…

新社長が就任早々、全員の前で言い放った。「60歳以上の公員は今月でクビだ。中卒の老人は邪魔なだけだ」と。俺は長年この工場のために技術を磨いてきた。なのに、その技術を「時代遅れ」と笑われ、追い出された。だが、一週間後、新社長から電話がかかってきた。「機械が動かない。どうにかしろ」と。俺は「自分で何とかしろ」と電話を切った。それで終わったと思ったのに、今度は工場の特許を奪おうとする男が現れた。俺...

新社長の加藤誠治が就任挨拶で言い放った言葉に、工場の空気が凍りついた。

「この工場を最先端の技術と機械が活躍する場へと作り替える。時代遅れの古い人間は必要ありません。60歳以上の公員は今月一杯でやめてもらいます」

ざわめきが広がる。この工場はベテラン職人が大半を占めている。彼らを切れば、工場は立ち行かなくなるのは目に見えている。

俺は思わず反論した。

「お言葉ですが、この工場は人手不足です。60歳以上を辞めさせれば業務に支障が出ます」

新社長は鼻で笑った。

「あんた、中卒なんだって?どうせ自分がやめさせられたら行き場所がないからそんなことを言うんだろ。中卒底辺の老人は必死だね」

その暴言に、若手の山田が怒り出したが、俺は彼を制した。

「若手の公員を派遣してもらう契約を結んである。来週には来る。彼らは最先端技術を身につけた優秀な連中だ。あんたたちよりよっぽど役に立つ」

俺たちの技術を否定され、怒りが爆発した。

「お前にそこまで言われる筋合いはない!」

「やめてやる!」

新社長も負けじと叫ぶ。

「やめたいならやめろ!逆らう奴は今すぐ出ていけ!」

結局、俺を含めたほとんど全員が工場を去ることになった。

それから一週間後、新社長から電話がかかってきた。

「機械が動かないじゃないか!どうにかしろ!」

派遣された若手たちはお手上げらしい。当然だ。工場の機械の半分以上は、俺が長年かけて改良した独自仕様だ。マニュアルもない。必要なのは経験と勘だ。

「今の状況は全部あんたが招いたことだ。自分で何とかしろ」

俺はそう言って電話を切った。

さらに一週間後、入院中の先代社長が俺の家を訪ねてきた。

「工場が危機に陥っているのに、寝ていられない。息子がすまないことをした。わしからも頼む。戻ってきてくれないか」

先代には恩がある。俺は承諾した。

「わかりました。社長の元で、また力を合わせて働かせてください」

やめた公員たちに連絡を取ると、全員が戻ってくることを了承してくれた。

こうして工場は元の日常を取り戻した。

ところが、ある日、一人の男が工場を訪れた。

「私、青木と申します。政治さんの知り合いで、以前若手を派遣した工場の社長です」

彼は名刺を差し出し、続けた。

「今日は特許技術の譲渡契約を履行するために来ました。息子さんと、こちらの工場の特許を譲渡する約束をしていまして、契約金も支払い済みです」

差し出された契約書には、確かに特許技術譲渡と書かれている。契約金は約2億。日付は、政治が社長を首になる直前だ。

「ちょっと待ってください。そんな話は初耳です」

社長が声を上げるが、青木は笑みを浮かべたまま言う。

「もし拒否されるなら、契約金の返還と違約金3000万を支払っていただきます」

政治は行方不明で、契約金も持ち逃げしたらしい。

「1週間猶予をあげます。よく考えてください」

青木はそう言い残して去っていった。

工場の財産である特許を渡せば経営が成り立たない。かといって、そんな大金を用意できるはずもない。

皆で頭を悩ませていると、山田が手を挙げた。

「あの、俺、一ついいですか?」

彼の提案に、俺と社長は顔を見合わせた。

約束の一週間後、青木がやってきた。俺たちは特許技術の譲渡を宣言し、契約書にサインした。

だが数日後、青木が怒鳴り込んできた。

「お前ら、俺を騙したな!譲渡された特許に、今受け負ってる部品の製造技術が含まれてないじゃないか!」

俺は冷静に答えた。

「ああ、そうですね。でも、あの技術は特許を取っていないんですよ」

青木はポカンと口を開けた。

特許を取れば、期間中は独占できるが、期間が過ぎれば公開されてしまう。だから、企業によってはわざと特許を取らずに秘匿する場合がある。俺たちの工場の主要技術も、まさにそれだった。

「私たちは契約に違反していません。怒鳴り込まれては迷惑です」

青木は怒り狂い、掴みかかってきたが、ベテラン職人たちに抑え込まれた。

「これ以上何か仕掛けてくるなら、警察を呼ぶぞ」

青木は尻尾を巻いて退散していった。

それから一ヶ月後、社長に連れられて、行方不明だった政治が現れた。

彼は愛人のところに転がり込み、青木の工場で働いていたらしい。青木は政治を利用して特許を奪おうとしていたが、大した特許でないと知り、返済を迫った。愛人にも捨てられ、政治は実家に泣きついてきたのだ。

「あいつに譲渡した特許は、契約金を返して取り戻してきた。どうか許してください」

土下座する政治に、俺は言った。

「今回のことは社長に任せる。でも、俺たちへの仕打ちは忘れていない。俺たちは政治さんと一緒には働けない」

政治は一週間後、妻と別れ、田舎町の工場へ旅立った。

今度こそ、工場に平穏が訪れた。社長は無理ができないため、夫人が代理を務めている。山田は相変わらずミスをするが、良い目と勘を持っている。

「おい、山田!急ぎだって言っただろう!」

「あ、すんません!今すぐやります!」

若手に負けるわけにはいかない。俺たちベテランも、日々全力で仕事に励んでいる。

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