リストラされて彼女にも振られて、公園のベンチで途方に暮れていた時、十年ぶりに叔母の美咲さんが現れた。「うちで暮らさない?」その言葉に甘えて、彼女の家に転がり込んだ。優しくて綺麗な美咲さんに、少しずつ惹かれていく自分がいた。ある夜、お酒の勢いで「ちょっとだけやってみない?」と誘ったら、彼女は「私、経験ないって言ってるでしょ」と顔を赤らめた。その夜から、二人の関係は変わっていった。でも、幸せな日…

リストラされて彼女にも振られて、公園のベンチで途方に暮れていた時、十年ぶりに叔母の美咲さんが現れた。「うちで暮らさない?」その言葉に甘えて、彼女の家に転がり込んだ。優しくて綺麗な美咲さんに、少しずつ惹かれていく自分がいた。ある夜、お酒の勢いで「ちょっとだけやってみない?」と誘ったら、彼女は「私、経験ないって言ってるでしょ」と顔を赤らめた。その夜から、二人の関係は変わっていった。でも、幸せな日...

リストラされて、彼女にも振られて、俺は公園のベンチで途方に暮れていた。28歳にもなって、どうして俺ばっかりこんな目に遭うんだ。大学を卒業してからずっと働いてきた超有名企業は、経営不振で大幅なリストラ。うちの部署はほぼ全滅だった。失業した直後に、半年付き合った美人の彼女にもあっさり振られた。きっと俺が有名企業に勤めてたっていうステータスだけで付き合ってたんだろうな。まあ、俺も彼女の顔が良くて付き合ってたから、人のことは言えないけど。

内定をもらえた時は嬉しかった。仕事だって必死に頑張ってきたのに。このままじゃ家賃も払えなくなって、マンションを追い出されてしまう。実家に頼れない理由があった。うちは母子家庭で、ずっと母さんと二人暮らしだった。物心ついた頃には父はいなくて、顔も名前も知らない。中学2年の時に母さんは再婚したけど、新しい父親とはどうしてもそりが合わなかった。そんな中、母さんは病気で亡くなり、新しい父親と二人で暮らすことになったけど、やっぱりうまくいかず、成人したと同時に家を出て、それからは連絡も取っていない。

誰か助けてくれる人はいないかな。そう思っていると、一人の女性が歩いてきた。

「あれ?もしかしてリキア君?」

「ん?はる子さん。」

はる子さんは母さんの年の離れた妹で、幼い頃からお世話になっている。母さんが亡くなった後も、はる子さんだけはこまめに連絡をくれていた。

「久しぶりね。こんな寒い中、一人で何してるの?」

「ちょっと考え事っていうか…」

「なんだか色々ありそうね。でもここは寒いから、どこか入りましょう。」

はる子さんに誘われて、近くのカフェで話すことにした。

「実は、会社を首になったんだ。このままじゃ家賃も払えそうになくてさ。」

「まあ、そうだったの。それは大変だったわね。この先どうするつもりなの?」

「もちろん仕事は探してるけど、なかなかうまくいかなくて…どうすればいいか分からないんだよね。」

「それは困ったわね。そうだ。もしよかったら、うちで暮らさない?」

はる子さんからの思いもよらない提案に、俺は驚いた。

「え、はる子さんの家に?」

今の俺にとっては、この上なくありがたい話だった。ただ、俺なんかが行ったら迷惑をかけてしまう。

「気持ちは嬉しいけど、なんか悪いよ。はる子さんに迷惑かけたくないし。」

「使っていない部屋もあるから、うちは構わないわよ。」

「でも、付き合ってる彼氏とかいるんじゃないの?いくら何でも、男が家に転がり込んでくるのは嫌なんじゃない?」

「そんなこと気にしないの。人は一人では生きていけないんだから、頼れる人に頼ればいいのよ。」

「本当にいいの?」

「もちろんよ。リキア君は姉さんの子供なんだから。」

はる子さんに説得され、結局俺は彼女の家に住ませてもらうことになった。マンションを引き払い、はる子さんの家にお邪魔した。

「今日からよろしくお願いします。」

「こちらこそ。家のものは好きに使っていいからね。自分の家だと思って、ゆっくりくつろいで。」

そう言うと、はる子さんはお風呂を沸かしに行ってくれた。リビングはどこか温かみがあって落ち着く雰囲気だった。観葉植物や手編みの小物がたくさん置いてある。やっぱり女性らしい部屋だな。

「うん。何か言った?」

「ああ、いや、なんでもないよ。そういえば、はる子さんはガーデニングとか編み物が趣味だったよね。」

「そうよ。でも、そんなことよく覚えてたわね。」

「うん。だって小さい頃に、手編みのマフラーとかよくくれたから。」

「そうだったわね。懐かしいなあ。」

はる子さんが用意してくれた夕飯を食べながら、昔の話で盛り上がった。

「リキア君の小さい頃は、本当に泣き虫で、何かあるとすぐに泣いてたのよ。」

「え、そうだったっけ?全然覚えてないや。」

「もうかなり昔のことだからね。私ももう40歳になっちゃったわよ。」

お酒を飲みながら話しているはる子さんは、顔が赤くなっていた。

「え、はる子さんってもう40歳なの?全然見えないね。」

「ちょっと、そんな大きな声で年齢言わないでよ。」

「いやいや、最初に言ったのははる子さんでしょ。」

「自分で言うのと、人に言われるのは別なの。」

はる子さんは母さんと一回り年が離れていて、俺にとってはおばというよりお姉さん的な存在だった。それに昔から本当に美人で、地元でも有名だったらしい。

「そういえば、昔はよく俺のことを寝かしつけてくれたよね。」

「そうよ。だってリキア君は寂しがり屋だから、一人だと全然寝てくれなかったんだもん。」

「そうだったかも。はる子さんは昔から優しかったな。」

「そうかな。普通じゃない?」

「優しいよ。母さんが亡くなった後も、こまめに連絡をくれたし。」

「そりゃ、おばとしてリキア君のことが心配だったからね。」

「すごく嬉しかったよ。本当にありがとう。」

その後もお酒を飲みながら話していると、互いに結構酔っ払ってきてしまった。

「はる子さんって、どうして結婚しないの?すごくモテるでしょ?」

「結婚も何も、私、彼氏もいたことないのよね。」

「え、本当?」

突然のカミングアウトに、俺はかなり驚いた。

「40歳になった今でも、何の経験もないの。どう?驚いた?」

「いや、そりゃ驚くでしょ。はる子さんって美人だし、たくさん経験してそうっていうか…」

「人は見かけじゃないってことね。もうこんな年になっちゃったから、それなりに覚悟はしてるけどね。」

「いや、諦めるのはまだ早いって。」

「リキア君、ありがとう。さあ、もう遅いし、そろそろ寝ますか。お布団の準備するから、ちょっと待ってて。」

はる子さんは寝室に行き、俺の布団を敷いてくれた。

「一人で寝れるかな?」

「ちょっと何言ってるのよ。もういい大人でしょ?」

「久しぶりに会ったんだから、昔みたいに一緒に寝ようよ。ねえ、いいでしょ?」

「ま、まあいいけど。」

はる子さんは一瞬驚いた表情をしたが、俺の手を握って一緒に布団に入ってくれた。

「断られるかと思ったよ。」

「まあ、リキア君は可愛いおいっこだからね。特別ってことで。」

「おいっ子って言っても、もう28歳だよ。」

「私から見たら、まだまだ子供ってこと。」

そう言って、はる子さんは俺の頭を優しく撫でてきた。同じ布団の中に美人のはる子さんがいることや、薄暗い部屋の雰囲気に、俺は変な気を起こしそうだった。だめだ、だめだ。俺は何を考えているんだ?相手ははる子さんだぞ。

「さっきからずっと人の顔見て、どうしたの?」

「いや、やっぱり綺麗だなあと思って。」

「やめてよ。恥ずかしいじゃない。」

「いや、冗談じゃなくて本当のことだよ。」

俺がそう言うと、はる子さんは恥ずかしそうにして布団に潜り込んでしまった。

「ちょっと飲みすぎちゃったみたい。」

照れているはる子さんが、とても可愛く感じた。今まで彼女のことを女性として意識したことのなかった俺は、かなりドキドキしていた。

「はる子さん、ちょっとだけやってみない?」

「え、だから私、経験ないって言ってるでしょ。」

「俺で経験してみたらいいじゃん。」

「私でうまくできるかな?」

思い切って誘ってみたが、意外にも乗り気なことに俺は驚いた。

「俺が教えてあげるから、大丈夫だよ。」

「じゃあ、ちょっとだけ。」

俺はもう我慢の限界で、はる子さんにそっとキスをした。すると彼女は恥ずかしそうに、俺の顔をじっと見つめてきた。

「ひょっとして、キスも初めて?」

はる子さんは無言で頷いた。

「なんか俺も緊張しちゃうな。」

「どうしてリキア君が緊張するのよ。」

俺たちは笑い合って、もう一度キスをした。するとはる子さんもスイッチが入ったようで、何度も俺にキスをしてきた。

「はる子さん、結構積極的だね。」

「だって、たくさん教えてくれるんでしょ。」

彼女はそう言って俺に抱きつき、さっきよりも激しく俺を求めてきた。そしてはる子さんは俺の体に触れ、その手付きに俺は思わず体が反応してしまった。

「はる子さん、本当に初めて?」

「初めてだってば。」

「なんか慣れてそうだけど…」

薄明かりに照らされた彼女の顔はとても色っぽく、俺の気持ちは最高潮に高まった。そして俺たちは激しく愛し合った。

「大丈夫?」

「大丈夫。恥ずかしいけど。」

「綺麗だよ。」

「もう恥ずかしいからやめてって。」

そして俺たちはさらにヒートアップして、何度も愛し合い、俺は力尽きた。

「え、もう終わりなの?」

「はる子さん、初めてなんだよね。すごいな。」

「もっと色々するのかと思った。」

「これからしばらくは一緒にいるんだから、また明日でもいいんじゃない?」

「まあ、それでもいいけど。」

俺はそのまま眠りに着いてしまい、翌朝目覚めると、美味しそうな朝食が準備されていた。

「はる子さん、おはよう。これ全部はる子さんが作ったの?」

「そうよ。お口に合うかは分からないけどね。」

「こんなちゃんとした朝ごはん、食べるの何年ぶりだろう。ありがとう。」

彼女の作った料理はどれも美味しくて、朝からとても幸せな気分になった。はる子さんは家事全般が得意で、その後も俺の世話をしてくれた。今の俺にできることは就活だと思い、必死に仕事を探していたが、なかなかうまくいかず苦しんでいた。

そんなある日、俺が趣味のギターを弾いていると、はる子さんが興味深そうに近づいてきた。

「すごく上手じゃない?もっと弾いてみてよ。」

「いいよ。はる子さんも弾いてみたら?」

「ギターって、ちょっと興味あったのよ。」

そう言って、俺は彼女にギターの弾き方を教えた。

「はる子さん、上達が早いね。」

「そうかな?君の教え方が上手なんじゃない?」

少し教えただけなのに、はる子さんは上手にギターを弾いていた。そんな彼女と過ごす何気ない時間は、心が落ち着いて癒された。そして、面倒見が良く優しいはる子さんに、俺はしだいに恋をしていた。彼女と一緒にいると自然と笑顔になっていたし、毎日がとても楽しかった。

その日の晩、食事をしている時に、俺は勇気を出して気持ちを伝えることにした。

「はる子さん、いつも俺の世話をしてくれてありがとう。」

「え、改まってどうしたの?そんなの気にしなくていいのに。私もリキア君のおかげで、毎日楽しく過ごせてるんだから。」

「俺さ、はる子さんのことが好きになっちゃったんだ。」

当然告白されるなんて思っていなかった彼女は、とても驚いていた。

「俺と付き合ってくれませんか?」

「リキア君、私もあなたのことが好きよ。これからもよろしくお願いします。」

「え、本当?やった。」

こうして俺たちの交際が始まった。

そして、はる子さんの家に住むようになって2ヶ月が経った。寒かった冬が終わり、すっかり温かくなった頃、はる子さんの提案でお花見デートをすることになった。俺たちは桜が有名な近所の公園に、手をつないで向かった。

「すごく綺麗ね。私、桜が大好きなの。」

「うん。本当に綺麗。俺も花なら桜が一番好きかな。」

俺たちは他愛のない会話をしながら公園を散歩し、はる子さんが作った弁当を食べた。

「はる子さんって、本当に料理上手だよね。他の家事も完璧だし。」

「一人暮らしが長いと、自然とそうなるものじゃない?」

「そうかな。俺も長いこと一人暮らししてたけど、今でも料理はできないし、家事も苦手だな。」

「そうなんだ。まあ、得意不得意があるってことね。でも今は私がいるからいいじゃない。」

「そうだね。本当に感謝してます。」

俺たちは笑い合って、二人で幸せを噛みしめていた。それからも買い物に出かけたり、カフェを巡ったりと、二人でよく出かけるようになった。今まではそこまでファッションに興味がなかった彼女は、急に服に興味を持ち始め、ますます魅力的になっていった。

しかし、そんな平穏な日々は長くは続かなかった。それはある日の夜のことだった。

「リキア、久しぶりだな。」

あまりに突然の出来事に、俺は頭が真っ白になった。面接を終えてはる子さんが待つ家に帰る途中、俺の前に父親が現れたのだ。

「何してるんですか?」

「そんなに驚くなよ。お前とちょっと話したいことがあってな。」

俺が家を出てから一度も連絡をよこさなかったのに、今更何の用だと思った?

「俺は話すことなんてありませんけど。」

「まあ、そう言うなよ。ちょっとだけ話を聞くだけだから。」

俺は早く家に帰りたかったが、面倒になるのが嫌で、仕方なく近くのカフェで話を聞くことにした。

「実は、お前が家を出た後、俺は再婚したんだ。」

「そうなんですね。」

「ただ、新しい嫁がとんでもないやつでさ。家事も全くしないし、文句ばっかり言ってやがる。お前の母親とは大違いだ。」

父親は新しい奥さんへの不満を吐き出した。

「それで、要件は何ですか?新しい奥さんの愚痴を言いに来ただけですか?」

「そのことで俺もストレスが溜まっちゃってな。ギャンブルに手を出すようになったんだ。そしたら借金が500万もできちゃってさ。」

「もしかして、金をせびりに来たってことですか?」

「まあ、そういうことになるかな。リキア、頼むよ。」

あまりの図々しさに、俺は怒るどころか呆れてしまった。久しぶりに会ったと思ったら、突然お金を要求するだなんて。

「やっぱりあなたはすごい人ですね。」

「父親に向かって、なんだその口の聞き方は?俺はお前が成人するまで育ててやったんだぞ。」

「あなたは昔から自分のことばっかりで、母さんはとても苦労していたと思いますけどね。それに、母さんが亡くなってからあなたは一度も墓参りに来ていません。そんな状態で、よく息子なんだから父親を助けろなんて言えますね。」

大人げないとは思ったが、俺も我慢できずについ口を滑らせてしまった。俺の態度に対して父親はさらに怒鳴りそうだったが、寸前のところで店員に声をかけられ、父は帰って行った。

俺はその日のことが頭から離れず、しばらくモヤモヤした生活を送っていた。そしてそのイライラから、ついはる子さんに八つ当たりをしてしまうこともあった。どこから連絡先を聞いたのかは分からないが、父親からは毎日のようにメールや着信履歴が残っていた。その度に俺のストレスはどんどん溜まっていく。

「リキア君、最近何かあった?」

それまでずっと黙って見守ってくれていたはる子さんだったが、見ていられなかったのか、心配そうに俺に聞いてきた。

「別に、なんでもないけど。」

「でも、なんか最近様子がおかしいっていうか…」

「何もないって言ってるでしょ。はる子さんには関係ないから。」

すると彼女は悲しそうな表情をして、寝室へ行ってしまった。

はあ。俺は本当に最低なやつだ。はる子さんは俺のことを心配してくれているだけなのに。今の俺には冷静さがない。だから彼女にひどいことを言って傷つけてしまった。

その後も俺たちは気まずくなり、数日間会話が交わされることはなかった。それでも俺はこのままではいけないと思い、彼女に本当のことを話すことにした。

「はる子さん、この前はひどいことを言ってごめんなさい。」

「うん。私も何も考えずに、デリカシーがなかったかも。」

「そんなことない。はる子さんにはいつも感謝してるんだ。ありがとう。ただ、今の俺には余裕がなくて、ついはる子さんにも八つ当たりしちゃったんだ。」

「やっぱり何かあったの?」

「うん。今日ははる子さんにもその話そうと思って。」

俺たちはダイニングテーブルに向かい合って座った。

「実はね、この前、父親が突然俺の前に現れたんだ。」

「父親って、お姉さんの再婚相手ってこと?でも、家を出てきたって言ってなかった?」

「そうなんだけど、誰かから俺の住所や連絡先を聞いたみたいで。」

「でも、どうしてお父さんがいきなり尋ねてきたの?」

「ギャンブルにはまって、借金が500万もできたんだってさ。それで俺に金をせびりに来たんだ。」

「そういうことだったの。」

俺は父親とのやり取りを彼女に打ち明けた。

「何年ぶりに目の前に現れたかと思ったら、いきなり金を借りたいって。俺はどうしたらいいんだよ。」

「リキア君は優しいから、一人で悩んでいたのね。」

そう言って、はる子さんは俺のことを優しく抱きしめてくれた。

「今まで黙っててごめんね。それに八つ当たりまでしちゃって。俺、本当に最低な男だよね。」

「私のことなら気にしなくていいのよ。それに、ちゃんと話してくれてありがとう。」

俺は彼女に話したことで、気持ちが少し楽になった。

「ねえ。今度、お父さんと話をしてみてもいい?」

「え?そんなの悪いよ。はる子さんは関係ないんだし。」

「そんなことないわ。私はリキア君の彼女だし、あなたのお母さんの妹なのよ。」

「それはそうだけどさ。」

「それに、困った時はお互い様でしょ。私を頼ればいいじゃない。」

「はる子さん、ありがとう。いつも俺の方が頼ってばかりでごめんね。」

そして次の週末、俺は父親を駅前のカフェに呼び出し、三人で話をすることになった。

「お、リキア、やっと会ってくれる気になったか。」

父親は微笑みながらやってきた。

「初めまして。はると申します。姉とリキアがお世話になりました。」

はる子さんと父親はこの日が初対面だったので、はる子さんは父親に丁寧に挨拶をした。

「それにしても、なんであいつの妹が?」

父親は不機嫌そうに椅子に座って、コーヒーを注文した。

「単刀直入に申し上げますが、この子に負担をかけるのはやめていただけないでしょうか?」

「負担だと?家族なんだから、助け合うのが当然だろ。」

「家族だから助け合う。私もその通りだと思います。では、あなたはこの子が困っている時に、助けたことがありますか?姉が亡くなった時の手続きも、彼一人でやったと聞いています。いつも自分のことばかり優先しているあなたに、この子を頼る権利がありますか?」

「お、あんたには関係ないだろう。」

父親は顔を真っ赤にして、はる子さんに怒鳴った。

「関係ならあります。私はこの子の彼女です。だから、もうこれ以上彼を苦しめて欲しくないんです。」

はる子さんは真剣な表情で父親に頼み込んだ。そしてその勢いに圧倒され、父は何も言えなくなっていた。

「本当に困っているのであれば、私が協力しますから。なので、もうこの子に辛い思いをさせないでください。お願いします。」

「分かったよ。リキア、悪かったな。」

「もういいよ。成人になるまで育ててくれたことは感謝してるから。」

父親は席を立ち、気まずそうに帰っていった。それからは、父親から連絡が来ることはなくなった。その背景には、はる子さんから父親に連絡して、本当に借金返済の協力をしたらしい。はる子さんのおかげで、今はギャンブルをやめてちゃんと働いているらしい。

そしてまた穏やかな生活が戻ってきた。しばらくして、俺も仕事が見つかり、心の余裕も取り戻しつつあった。

「本当におめでとう。よく頑張ったね。」

「ありがとう。これも全部、はる子さんのおかげだよ。」

「そんなことないわ。これはあなたの努力の結果よ。」

「うん。はる子さんが俺のことを支えてくれたから、頑張れたんだ。これからは恩返しできるように、もっと頑張るから。」

「私はリキア君が一緒にいてくれるだけで、十分幸せよ。」

彼女はそう言って微笑んでくれた。

それから3年が経ち、俺たちははる子さんの家を出て、もう少し広いマンションに引っ越した。今でも毎日楽しい生活を送っている。

「ねえ、はる子さん、結婚式をあげない?」

「え?結婚式?」

「うん。それも二人だけで。俺たちは法律上結婚できないでしょ。でも、ちゃんと夫婦になったっていう記録は残したくて。」

「いいわね。二人だけの結婚式、あげよう。」

こうして俺たちは二人だけで結婚式をあげた。カフェを貸し切った小さな式だったけど、俺たちにとっては最高の結婚式だった。その時に見たウェディングドレス姿のはる子さんは、今まで見た彼女の中で一番綺麗だった。

「私、今幸せだよ。」

「俺も人生の中で、今が一番幸せだ。」

「大げさじゃない?」

「そんなことないよ。はる子さんとずっと一緒にいられて、本当に幸せなんだ。これからもよろしくね。」

「うん。こちらこそ。」

こうして俺たちは夫婦になり、新しい人生を歩み始めた。結婚式から5年が経ったが、今でも俺たちは仲良く暮らしている。あの時彼女が俺を見つけて、俺を助けてくれたから今の幸せがあると思うと、はる子さんには感謝してもしきれない。この先も彼女への感謝の気持ちを忘れずに、はる子さんの笑顔を守っていきたいと思っている。

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