同窓会で、昔から私を貧乏人と笑っていた男が、また同じ言葉を投げつけてきた。「お前は一生、そこから抜け出せない」と。私は何も言い返さなかった。ただ、彼が知らないことが一つある。数日後、彼は私の会社の会議室で、契約を取りに来る。そして、私が社長だと知った時の彼の顔を見たかった。 続きが気になる?コメントで教えて。

同窓会で、昔から私を貧乏人と笑っていた男が、また同じ言葉を投げつけてきた。「お前は一生、そこから抜け出せない」と。私は何も言い返さなかった。ただ、彼が知らないことが一つある。数日後、彼は私の会社の会議室で、契約を取りに来る。そして、私が社長だと知った時の彼の顔を見たかった。 続きが気になる?コメントで教えて。

同窓会の会場で、久しぶりに会った小坂信吾は、私を見るなり笑い出した。

「おい、森山。貧乏人のお前が、よくも大卒の同級生の中に来れたもんだな。」

彼は昔からそうだった。地元の大企業の御曹司で、成績優秀で、傲慢で高飛車。私の話など聞かず、昔と同じように私を貧乏人だと切り捨てた。

私は苦笑いを浮かべるしかなかった。高校時代から、小坂はいつもそうだった。私を笑い、見下し、満足する。私はもう大人になったのだから、そんなことは気にしないようにしていた。

しかし、小坂は酔っているのか、しつこく私に絡んできた。

「俺は生まれながらの金持ち勝ち組。貧乏人のお前は、一生そこから抜け出せない。」

彼の言葉に、周りの友人たちも苦笑いを浮かべるだけだった。

そんな時、私の隣に若月裕子さんが現れた。彼女も同じクラスだった女性で、今は私の会社で秘書をしている。

「あら、森山君、今日は随分と穏やかですね。会社では、頭の切れる結構きつめな社長って言われてるのに。」

若月さんは、小坂に構わず、私のことを話し始めた。

「森山君は、今、私の勤務先の社長をしているのよ。私はその会社の秘書課で働いていて、社長室付きなの。」

小坂は目を丸くして、私を見た。

「はあ?森山が社長?おいおい、若月、何言ってるんだ。嘘に決まってるだろ。」

小坂は大笑いした。

「お前みたいな貧乏野郎が社長?そんな会社、どこにあるんだよ。」

私は何も言わなかった。小坂のような人間に、何を言っても無駄だと思ったからだ。若月さんも、私の気持ちを察したように、それ以上は何も言わなかった。

「まあ、小坂君、今日はこのぐらいで。多分、君とは近々会うことになる。その時はよろしく頼むよ。」

私はそう言って、その場を離れた。

同窓会から5日後、私は自社の会議室で、客人を待っていた。

「失礼いたします。本日はこのような場を設けていただき、ありがとうございます。私、小坂商事社長の小坂信吾と申します。」

小坂は、私の会社との業務提携の商談に来ていた。彼は、私が社長だとは知らずに。

小坂は入室して挨拶を済ませ、顔を上げた。そして、私を見て、言葉を止めた。

「どうして…なんでお前がここにいる?」

小坂は、眉間にしわを寄せて、私に尋ねた。

若月さんが、冷めた表情で答えた。

「小坂さん、この前の同窓会で話した通り、嘘でも何でもなく、あの話は真実です。」

小坂は青ざめた顔で、私を睨んだ。

「まさか…本当にあの貧乏の森山が社長だと?冗談じゃない。」

私は、小坂に向き合って、自分のこれまでの道のりを話し始めた。

「いいか、小坂君。私は別に、ここまで自分なりに努力して働いてきただけだ。貧乏などと自分を卑下しようとも思わずにね。高校を卒業した私は、就職をした。入社したのは地元の鉄鋼会社で、現場の工場勤務からキャリアをスタートさせて、地道にここまでやってきた。」

私は、工場で働き、営業に転じ、会社を成長させ、2年前に社長に抜擢された。若月さんも、社長室付きの秘書として、私を支えてくれている。

「そんなの嘘だろ。そんなはずがあるわけない。お前はただの貧乏人だ。」

小坂は、大きな声で怒りをぶつけた。しかし、その暴言は、周りの人たちの耳にも入り、彼らを怒らせた。

「お引き取り願いたい。」

誰かがそう言って、小坂を部屋から追い出そうとした。私はそれを冷静に止め、小坂に確認した。

「小坂君、君は今日ここに、契約を取ろうとそのつもりで来たんだろう?だとしたら、ひとまず君の話は聞きたい。それから、私が手に入れた資料に関して、君の口で説明してもらいたいこともあるんだ。」

私は、小坂に事前に入手していた書類のファイルを見せた。それは、小坂の会社のここ数年の実績と経営状況に関する報告書だった。

その中身から読み解くと、小坂の経営する会社は、すでに虫の息の状態だった。原因は、小坂の強引なワンマン経営。彼は、父親から社長職と会社を引き継ぐと、自分のやりたいことだけに突き進んでいった。本業の製造業をなおざりにして、不動産投資や飲食業界への参入を試みて失敗。損失を補填するために、健全なはずの会社の本業を食いつぶすかのように金を使った。

「正直、どうしてこんなにやりたい放題なのか。調べれば出てくるような情報が、これだけ残っているというのに。」

「それは仕方ないだろう。会社経営はそういうものなんだ。」

「そうじゃない。自分が社長だからと、好きにしていいものじゃない。」

小坂の会社は、逆転ホームランでも打たなければ、どうにもならない状態だった。だからこそ、彼はうちと提携することに望みを託し、自ら商談に乗り出したのだろう。

「だからお願いします。森山社長。どうかこのチャンスを、今回の契約をお願いしたい。」

小坂は、必死の形相で頭を下げた。

「契約を締結すれば、そこからは心を入れ替える。会社のために必死でやる。」

「そうか。だとしても、申し訳ないな。私はリスクを抱えたくないんだ。」

私は、こちら側で用意していた契約書を取り出した。

「君の態度を見れば、チャンスはない方がいいと思う。それに、君みたいな人間が経営する会社と手を組むというのは、とんでもないギャンブルだ。」

私はそう言って、小坂の目の前で契約書を破り捨てた。

「ああ、待て、待ってくれ。頼む。このままじゃ会社が潰れる。」

小坂は、私の手を掴もうとした。私は小坂を振り切り、契約書を破り切った。

「いいか?君はこれを機に学んだらいい。それで、君が散々笑った貧乏を知ればいいんだ。」

私は小坂に冷たく言い放ち、若月さんや数人の役員と会議室を出た。

小坂が騒動を起こしてから1ヶ月、小坂の会社は見事に倒産した。小坂は会社を失い、家を失い、家族も失ったと聞いている。今は消息不明で、地元の友人の話では、小坂一族自体も町で見かけなくなったという。

少しは彼に同情でも湧くかと思っていたが、私は驚くほど淡々とその後の話を聞いていた。そして、自分がやるべきことを改めて見つめ直していた。

自分も経歴から考えれば、転んでもおかしくない。だが、周りのサポートのおかげもあり、地に足をつけて仕事に邁進できている。若月さんをはじめとした、一緒に働くチームの力が大きいことは言うまでもなく、まだ経験の足りない社長の私は、助けられている。

これからの自分には、今まで以上に慎重になり、学ぶことが求められている。それを忘れず、私は自分の使命を全うすべき。そう考えている。

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